先週はスイムな一週間だったなあ。火曜のアトムに始まり、水金のグータロウSWIM、土日も泳いじゃったから、計5日だよ。トラやめてマスターズに転向しちゃいそうな勢いだね。転向と言えば今泉奈緒美スゲーよね。おっと、今日は脱線しないぞ!スイムな一週間って言っても、へっぽこな私は、マスターズのお兄様&お姉様のようにガンガン&バシャバシャ&アヘアヘな練習はしないんだ。練習をしないと言うか出来ないってのが正解かな。か弱き小さなおっさんだからね。
そんなツイッギーなおっさんが、この一週間ブログの更新をサボって、何をしていたかと言うと、実は読書をしていたんだ。勿論ハーレクイーンロマンスじゃあないよ。水泳本3冊と解剖学本とバイオメカニクスの本のつまみ読み。水泳本はTI本と前回のブログでちらっと紹介した本と洋書のドリル本。3冊も読むつもりはなかったんだけど、TI本を読んでいるうちに、あれれ?と何かが降りてきたんだ。
本を読んで何かを理解する。頭の良い人は1冊読むだけで多くを理解できちゃうんだけど、私の場合は効率が悪く、何冊も読まないと1つの事も理解出来ないんだよね。ほら、物分かりの悪い人に何度も言葉を変えながら説明したりするじゃない?だからさあ…例えば…つまりね…、なんて言いながら、同じ事を言い換えて説明するじゃない?あれと一緒かなあ。色んな言葉から、自分の経験の引き出しの中の同じようなモノを見つけて、はじめて「分かる」んだよねえ。
ここで「TI本」と言っているのは「誰でもラクに美しく泳げる カンタン・スイミング 効率的に泳ぐトータル・イマージョン(TI)スイムメソッド」という長~いタイトルの本。タイトルだけ見ると、ビギナー向けの本に思えるでしょ。でも、決してそうではないんだ。この本に記されている内容は、優しい言葉で綴られているが、実に理に適っていると思うよ。前回のブログの(ブログの内容とは無関係な)タイトル「形状抵抗・造波抵抗・摩擦抵抗・抗力・揚力・流線形」は、水の中を進む仕組みを説明するための重要なキーワードなんだけど、これらを見事に具現化しているんだ。難しい事を優しい言葉で説明するってのは実に丁寧な仕事だよね。そこには単なる文章技術だけじゃなく、伝えようとする「愛」があるよね。
このTI本を読んでいるうちに、以前買った「THE 100 BEST SWIMMING DRILLS」の内容がピタリと重なったんだ。ドリルやメソッドの名前は異なれど、そこで謳われている本質的なものが同じだって気付いたんだよ。これに加えて「泳ぐことの科学」で得た俄か知識との相乗効果。ナウな感じで言い換えると、シナジーが生まれちゃったって感じかな。
こうなったら、試したくなるじゃない?そこで、先週の土曜日に頭の中にあるモヤモヤを晴らしに、東京体育館に行ってきたんだ。東京体育館のプールの魅力は50Mプールなんだけど、私は25Mに直行した。そんでコースロープで区切られていない自由なエリアで只管身体を動かしてみた。傍目から見ると何だかデタラメで、水に浮かんでふざけてるようにしか見えない、そんな変な動きを色々と試してみたんだ。重心と浮心のチェックをしたんだ。何だそりゃ?
重心(じゅうしん、Center of gravity)とは、力学において、空間的広がりをもって質量が分布するような系において、その質量に対して他の物体から働く万有引力の合力の作用点。質量中心(しつりょうちゅうしん、Center of mass)ともいう(質量分布が均一であるときは Centroid とも)。『Wikipedia』
何のこっちゃ?
おめでとうございま~す!の海老一染之助さんの皿回し、あれを思い浮かべて欲しいのだけど、棒が皿を支えているよね。あの支えてる点がまさに重心。つまり重さのバランスを取る点だ。水に沈むモノにも重心があって、プールに沈む私の身体にも重心があるんだよね。染之助さんならば、私を回転させ、回る私の重心を即座に見つけるんだろうなあ。
水などの流体中にある物体には、重力とは逆の方向の力が作用する。この力を浮力(ふりょく)と言う。物体は流体から圧力を受けている。このとき圧力は物体の上と下では異なる(富士山の頂上の気圧と麓の気圧のように)。これは、組体操で上の方の人が支える力が小さいのに対し、下の方の人が支える力がより大きいことを考えれば分かりやすいだろう。 この物体が受ける上下の力の差が浮力である。すなわち、下から受ける力の方が大きくなるため、物体には下向きの重力とは逆の、上向きの力が作用するのである。(省略)『Wikipedia』
重心の説明より少しだけ分かり易いけど、やっぱり何のこっちゃ?
水ってのは、無理矢理モノを押し入れると「てめえぇ、押すなよ~」と押し返してくるんだよ。この力を浮力と思って頂戴。その真ん中が浮心と言うんだ。これでもよく分からない人は、ゴム鞠を持ってお風呂に入ろう!ゴム鞠を無理矢理浴槽に沈めるとポンと浮かんでくるからさ。
人間は「基本浮かぶ」のだけども、重心が浮心よりも下の方にあるので脚の方に沈んで行く。でも手足を広げたり伸ばすなどして身体をコントロールしてゆくと、静止して浮かぶことが出来るんだよね。これは重心と浮心を近づき、2つが鉛直方向に一直線に並んだ状態なんだ。小学校の時に「伏し浮き」って習わなかった?これがその正体。何を今さらと思ってる人も多いと思うのだけども、これはとても重要な技術なんだ。
TI本も洋書ドリルも浮きに関するの章からはじまっているんだよ。TI本の方には「浮き」の名前をつけていないのだけど、洋書ドリルには Downhill Float という名前がついている。どちらも言っている事は全く同じで、Downhill とあるように、上半身が若干下がり、下半身が浮いた姿勢、つまり重心を身体の上の方に置けよって言っているんだよね。
この姿勢ができるようになると、脚が沈まないようにするためのキックが不要になるんだ。推進力に関係のないムダな力を使うんじゃねー!って言っている訳さ。ごもっとも!私らの場合、バイクの為に脚を残しておきたいと言う意味でも成る程「うんうん」だよね。
随分長くなっちゃったな。まあいいや。でね、この2つの指南書の特徴を言うと、両者とも「ビルド」(build)というトレーニング方法を元にしているんだ。ビルドてのはビルヂングのビルド。「組み立てる」って意味って事は分かるよね。じゃあ、何を組み立てるの?って事になるんだけど、それは「理想的な泳ぎ」なんだ。理想的な泳ぎの身体の使い方をバラバラに分解して、分解した動きをプラモデルを造るように再び「組み立て」る方法なんだよね。
「泳ぐことの科学」の中で、このビルドについての説明を PNF(Proprioceptive Neuromuscular Facilitatin)(脳に働きかけるリハビリテーション)というリハビリテクニックを引用して説明している。
筋肉は、関節などを動かす感覚神経に情報を与えている訳です。そのとき、その感覚を受容するレセプター(感覚受容器)が、自分の状態を情報として脳へと送り返す。つまり、指令を受けるだけでなく、その指令内容を脳に報告するわけですね。これによって脳はその動きを学習していうわけです。(中略)何か新しい動きを覚えられるとき、最初は自分の頭に問いかけながら動かなければなりません。意識しながら動かなければならないので、選手もそれなりのストレスを覚えます。しかし、何度も何度も同じ動作を反復していくうちに、脳がその動きを覚えはじめて、最終的には意識せずともオートマチックに動けるようになるんですね。(中略)ただ、怖いのは、脳が間違えた動きを覚えてしまったときです。そうなると、せっかくの反復練習が逆効果になるし、修正もなかなか難しい。それどころか、故障につながることもあります。(『脳を鍛える筋トレ』)『泳ぐことの科学』の引用より引用
何のこっちゃ?
人間ってのは「脳ミソ社長」が、あれやれ&これやれと「筋肉次長」や「関節課長」らに指図するんだけど、次長課長らは都度「○○しました!」って報告してるんだね。同じ報告を受け続けると社長の方も面倒になってくるじゃない?だから、会社のスローガンにしちゃうんだ。「社長!右腕を30度の角度で入水したであります!」「社長!左腕を30度の角度で入水したであります!」「社長!右腕を30度の角度で入水したであります!」「社長!左腕を30度の角度で入水したであります!」「社長!右腕を30度の角度で入水したであります!」「社長!左腕を30度の角度で入水したであります!」脳ミソ社長も、たまったもんじゃない。「分かった分かった、もう聞き飽きたわ。我が社では腕の入水角度を30度とする!」
さてさて、ここで重要なのは引用の後半「ただ、怖いのは、脳が間違えた動きを覚えてしまったときです。そうなると、せっかくの反復練習が逆効果になるし、修正もなかなか難しい」ってところだ。
私が「次長課長」とは言わず「次長課長ら」と言っているのは、身体の至る所に色んな次長課長がいるからなんだ。「社長!左腕を30度の角度で入水したであります!」と報告したのは、上肢支社の上腕部、下腕部の管理職(上腕二頭筋、上腕三頭筋、橈側手根屈筋、尺側手根屈筋、尺側手根屈筋)と、その関連部署の担当(靭帯、関節等)及び、社長室直轄の次長(末梢神経系)たちなんだ。実際には、本社(頭部)や支社(上肢下肢)の総勢たるメンバーからも、脳ミソ社長に報告が上がっているんだよね。
つまり、スクロールの情報が脳に報告される場合、それは単に腕の動きだけではなく、同時に全身の姿勢や動きについても報告されている訳さ。つまり腕だけ上手に動かせても意味がないどころか、脳が間違った動きを覚えてしまうって事になるよね。ストロークのドリルをする場合も、全身を意識しなければならないんだ。デタラメなボディバランスでプル練習をしちゃいけない、って事なんだよ。
って事はさ、プルブイ使ったプル練習ってダメじゃんって思わない?無理矢理浮力をつけて、浮心をずらしたポジションで反復運動するんだもん。そう言えば、TI本にも洋書ドリルにも、ビート板やプルブイを使ったドリルがない。考えてみると当然だね。だってさ、これらはビルドを元にしたスイム・メソッドなんだもん。ドリルってのは「理想的な泳ぎ」を分解したパーツなんだよな。だから、道具に頼らない、自然な浮き方で行われるべきなんだよね。
困ったことに、グータロウでもアトムでも、ビート版やプルブイを使ったメニューで練習をしている。やめればいいのか?いやいや、グータロウもアトムも楽しい。仲間とのコミュニケーションは重要だ。そこで私は、こう考える事にした。「これはクロールのキックではなく、ビート板キックという新しい泳法である」と。別モノだと強く意識する事で、クロールではないカテゴリーとして脳が認識してくれるかも知れない。実際、どうなんだろうね?
久しぶりのブログだから、ついつい書き過ぎちゃったなあ。スイム・メソッドの話はこれからちょくちょく書いていくよ。書き留める事で頭の整理が出来、一石二鳥なんだよね。次回は基本姿勢とストロークの事を書くつもりさ。
随分の長い間更新していなかったから、忘れている人も多いと思うけど、このブログを読み終えたら、3分以内に右上の「トライアスロン」ボタンをポチっとしないと怖い夢を見るんだぜ。
因みに私の脳ミソ社長は経営管理能力ゼロだったりする。